「電気代が高騰しているから、もっとお得な新電力に切り替えたい…」
「でも、新電力にすると毎年もらっている原子力立地給付金がもらえなくなるんじゃないか?」
「手続きが複雑になったり、自分で何か申請が必要になったりするのかな?」
原子力発電所が立地する地域にお住まいの方で、このような不安や疑問をお持ちではありませんか?
ご安心ください。結論からお伝えすると、新電力に切り替えても原子力立地給付金はこれまで通り受け取れます。
この記事では、原子力立地給付金の仕組みといった基本から、新電力に切り替えた場合の手続き、受け取り方法、具体的な計算方法まで、図や表を使いながらどこよりも分かりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、給付金に関するあなたの不安はすべて解消され、自信を持ってご家庭に最適な電力会社を選べるようになっているはずです。

- 新電力でも給付金は変わらず受け取れる
- 特別な申請は原則不要
- 通知元が変わる可能性がある
- 郵便振替払出証書は期限に注意
- 減額支援助成金も知っておこう
原子力発電所周辺の地域住民に交付される「原子力立地給付金」は、新電力会社に切り替えても問題なく受け取れる制度です。給付金の財源は全国の電気利用者が負担する「電源開発促進税」から出ており、契約電力会社に関係なく、対象地域に住み電気契約していれば交付されます。手続きも基本不要で、従来通り「お知らせ」のハガキで通知されますが、新電力利用者は通知元が「電源地域振興センター」になる点だけ要注意です。受け取りは郵便局や口座振込。有効期限を過ぎないように気をつけましょう。
そもそも原子力立地給付金とは?

まずは、毎年交付されるこの給付金が一体どのような制度なのか、基本から確認しましょう。仕組みを理解することで、なぜ新電力に切り替えても問題ないのかが明確になります。
原子力発電の安定的な運営を支える重要な制度
原子力立地給付金は、原子力発電施設等の周辺地域の振興や、住民福祉の向上を目的として交付されるお金です。これは「電源三法交付金」と呼ばれる国の制度の一つで、原子力発電という国のエネルギー政策に協力している地域に対して、感謝と地域活性化の意味を込めて交付されています。
つまり、日頃から原子力発電所の安定的な運営にご協力いただいている地域住民の方々への還元策という位置づけです。決して「危険手当」のような性質のものではなく、地域の発展を支えるための重要な財源となっています。
給付金の財源は電気料金の一部
この給付金の財源は、「電源開発促進税」という税金で賄われています。これは、私たちが毎月支払う電気料金の一部に含まれており、電力会社の種別(大手電力・新電力)に関わらず、電気を使用する全国民が負担しています。
集められた税金は国の特別会計で管理され、それを基に原子力発電所などの立地地域へ交付金として配分されます。つまり、全国の電気利用者が、立地地域の暮らしを支えているという構図です。
給付金がもらえる対象者と対象地域
給付金の対象となるのは、交付対象地域内で、電力会社と電気の需給契約を結んでいるご家庭や企業です。契約アンペア数や電気使用量にかかわらず、1契約ごとに交付の対象となります。
交付対象地域は、原子力発電所、使用済燃料中間貯蔵施設、再処理施設などが立地する市町村およびその周辺の市町村です。具体的な対象地域は、資源エネルギー庁のウェブサイトや、お住まいの自治体のホームページで確認できます。
対象となる施設 | 対象地域の例(一部) |
---|---|
原子力発電所 | 北海道泊村、宮城県女川町、福島県大熊町・双葉町、新潟県柏崎市・刈羽村、福井県敦賀市・美浜町・高浜町・おおい町、島根県松江市、愛媛県伊方町、佐賀県玄海町、鹿児島県薩摩川内市など |
再処理施設 | 青森県六ヶ所村 |
使用済燃料中間貯蔵施設 | 青森県むつ市 |
※上記は一例です。ご自身の地域が対象かどうかは、各自治体の情報をご確認ください。
給付金に関わる組織の関係性
給付金は、国から直接住民に支払われるわけではありません。下の表のように、複数の組織が関わって私たちの手元に届きます。
組織名 | 役割 |
---|---|
国(経済産業省資源エネルギー庁) | 制度全体の管理。電源開発促進税を財源として確保。 |
電源地域振興センター | 国から交付事業を委託されている一般財団法人。電力会社への交付金の支払い、新電力契約者への交付事務などを行う。 |
各電力会社(大手電力・新電力) | 契約者情報の管理。自社で交付事務を行う、または電源地域振興センターに委託する。 |
住民・企業(電気契約者) | 給付金の最終的な受取人。 |
この関係性を理解しておくと、後述する「新電力に切り替えた場合の通知元の違い」がスムーズに理解できます。

給付金を「危険手当」と誤解せず、地域支援の一環として正しく理解しましょう。
- 地域振興を目的とした国の制度で、エネルギー政策の協力に対する還元。
- 財源は全国民が負担する電源開発促進税であり、誰もが関係者。
- 電気会社の種類に関係なく、地域と契約が条件。
新電力に切り替えても原子力立地給付金はもらえる?


ここからが本題です。電気代節約のために新電力への切り替えを検討している方が、最も気になるポイントを解説します。
結論:新電力に切り替えても給付金は受け取れます!
冒頭でもお伝えした通り、契約する電力会社を新電力に変更しても、原子力立地給付金は問題なく受け取れます。
なぜなら、この給付金は「特定の電力会社と契約していること」が条件ではなく、「対象地域で電気の供給契約を結んでいること」が条件だからです。給付金の財源は全国の電気利用者が負担しており、どの電力会社と契約していても、対象地域で電気を使っているという事実に変わりはありません。安心して、ご自身のライフスタイルに合った電力会社を選んでください。
手続きは基本的に不要!これまで通りでOK
「新電力に切り替えたら、自分でどこかに申請手続きをしないといけないのでは?」と心配される方もいますが、その必要は基本的にありません。
給付金の交付手続きは、あなたが契約している電力会社(または交付事務を委託された電源地域振興センター)が、契約者情報をもとに行ってくれます。私たちがすべきことは、毎年送られてくる「お知らせ」を確認し、指定された方法で給付金を受け取るだけです。これは、大手電力会社と契約している場合と何ら変わりありません。
大手電力会社と新電力での違いを比較
新電力に切り替えても給付金は受け取れ、特別な手続きも不要です。しかし、一点だけ知っておきたい違いがあります。それは「お知らせ」を送ってくる通知元が変わる可能性があることです。
比較項目 | 大手電力会社の場合(例:関西電力、九州電力など) | 新電力の場合(例:ドコモでんき、楽天でんきなど) |
---|---|---|
給付金はもらえる? | もらえる | もらえる |
自分で申請は必要? | 不要 | 不要 |
お知らせの通知元 | 契約している大手電力会社から届くことが多い | 電源地域振興センターから届くことが多い |
受け取り方法 | 郵便振替払出証書、口座振込など | 郵便振替払出証書が一般的 |
このように、新電力に切り替えると、これまで電力会社名で届いていたハガキが「電源地域振興センター」という名前で届くようになります。見慣れない名前だからといって、怪しい郵便物だと思って捨ててしまわないように注意しましょう。
なぜ新電力だと通知元が変わるのか?
通知元が変わる理由は、多くの新電力会社が給付金の交付事務を自社で行わず、専門機関である電源地域振興センターに委託しているためです。
大手電力会社は長年の実績と体制があるため、自社で交付事務まで行っている場合が多いです。一方、新電力は経営を効率化し、その分を安い電気料金として顧客に還元しています。そのため、給付金交付のような付随的な業務は、専門の外部機関に任せるという合理的な判断をしているのです。受給者側からすれば、通知元が変わるだけで受け取れる事実に変わりはないため、全く心配する必要はありません。



「電源地域振興センター」名のハガキを見落とさないようにしましょう!
- 契約会社ではなく「地域」と「契約の有無」が条件。
- 手続きは自動。ユーザーは受け取るだけでOK。
- 通知元だけが変わる可能性があるため、郵便物の確認が大事。
原子力立地給付金の受け取り方と計算方法


制度の仕組みや新電力との関係がわかったところで、次に「いつ、いくら、どうやって」もらえるのか、具体的な手続きの流れと計算方法を見ていきましょう。
給付金受け取りまでの3ステップ
給付金の受け取りは、以下の3つのステップで完了します。非常にシンプルです。
- 「原子力立地給付金交付のお知らせ」が届く
契約者住所宛に、圧着ハガキなどで通知が届きます。通知元は電力会社または電源地域振興センターです。 - 内容(氏名、金額)を確認する
ハガキを開き、記載されている氏名や住所、交付金額に間違いがないか確認します。 - 指定の方法で受け取る
「郵便振替払出証書」が同封されている場合は郵便局へ、口座振込の場合は自動的に入金されるのを待つだけです。
いつもらえる?交付時期の目安
交付時期は地域や電力会社によって多少前後しますが、例年10月頃に「お知らせ」のハガキが発送され、受け取りが可能になるケースが一般的です。算定期間は、前年度の10月1日から当年度の9月30日までの1年間であることが多く、この期間中に対象地域で電気契約をしていた月数に応じて金額が計算されます。
いくらもらえる?給付金の計算方法を解説
給付金の額は、以下の計算式で決まります。
給付金額 = 交付単価 × 契約口数 × 算定期間中の契約月数
交付単価は、国の予算や対象地域の状況によって毎年変動します。参考として、近年の単価は1契約あたり月額244円で推移しています。
例えば、交付単価が244円で、1年間(12ヶ月)ずっと1契約を続けていた場合の計算例は以下の通りです。
244円 × 1契約 × 12ヶ月 = 2,928円
つまり、年間で約3,000円が交付されることになります。これは電気料金から直接割り引かれるのではなく、現金または振込で別途受け取る形になります。
郵便振替払出証書での受け取り方と注意点
現在、最も一般的な受け取り方法が「郵便振替払出証書」です。お知らせのハガキがこの証書を兼ねています。
受け取る際は、この証書と本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)、印鑑(認印で可)を持って、お近くのゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口へ行きましょう。
ここで最も重要な注意点が、証書には有効期限があることです。通常、発行日から6ヶ月以内に設定されています。期限を過ぎると窓口で換金できなくなるため、ハガキが届いたら早めに手続きを済ませることを強くお勧めします。
口座振込での受け取り方
一部の大手電力会社などでは、電気料金の支払いに利用している銀行口座へ、給付金を自動的に振り込んでくれる場合があります。この場合は、お知らせハガキに「ご指定の口座へ振り込みます」といった旨が記載されています。
自分で郵便局へ行く手間がかからないため非常に便利な方法ですが、新電力では対応していないことが多いのが現状です。



ハガキが届いたら、必ず開封して中身を確認し、早めに手続きしましょう。
- 例年10月頃に通知が届くのが一般的。
- 年間で約3,000円程度の給付。
- 振替証書には有効期限あり。期日を過ぎると受け取れないリスクも。
【補足】原子力立地給付金減額支援助成金とは?


原子力立地給付金に関連する制度として、「減額支援助成金」についても知っておくと、より理解が深まります。
対象となるのはどんな人?
これは、原子力立地給付金を受け取ったことが原因で、地方公共団体が実施する他の福祉サービス(例:就学援助制度、公営住宅の家賃減免など)の支援額が減額されたり、対象外になったりする場合に、その減額分を補填してくれる制度です。
給付金は所得として扱われるため、所得額に応じて決まる他の支援制度に影響を与えてしまう可能性があります。そうした不利益が生じないようにするための、いわばセーフティネットのような制度です。
助成を受けるための手続き
この減額支援助成金は、自動的に交付されるものではありません。対象となる可能性のある方が、ご自身で市町村の担当窓口に申請する必要があります。
「給付金をもらったことで、他の手当が減ってしまったかもしれない」と感じた場合は、まずはお住まいの市町村役場の担当課(福祉課や教育委員会など)に、この制度について問い合わせてみてください。



支援制度に影響が出たら、迷わず役所の福祉課に問い合わせましょう。
- 他の福祉制度への影響を防ぐためのセーフティネット。
- 自動ではなく申請が必要。
- 影響がありそうな方は自治体に早めの相談を。
【Q&A】原子力立地給付金のよくある質問まとめ


最後に、これまで解説しきれなかった細かい疑問について、Q&A形式でまとめてお答えします。
- お知らせのハガキ(郵便振替払出証書)をなくしてしまいました。
-
すぐに通知元に連絡してください。通知ハガキに記載されているはずの電力会社、または電源地域振興センターのコールセンターに電話し、紛失した旨を伝えて再発行の手続きを依頼しましょう。
- 郵便振替払出証書の有効期限が切れてしまいました。
-
諦めないでください。有効期限が切れた後でも、発行日から最長5年間は請求する権利があります。まずは通知元の機関(電力会社または電源地域振興センター)に連絡し、期限切れの証書を持っていることを伝えてください。新しい証書の再発行や、口座への送金といった方法で対応してもらえます。ただし、手続きに時間がかかる場合があるため、やはり期限内の換金が一番です。
- 契約者の名義人が亡くなった場合はどうなりますか?
-
法定相続人が給付金を受け取ることができます。通知元の機関に連絡し、契約者が亡くなったことを伝えてください。手続きには、亡くなった事実と相続関係がわかる書類(戸籍謄本など)の提出を求められる場合があります。
- 引っ越した場合、給付金はどうなりますか?
-
給付金は、算定期間中に対象地域に居住し、電気契約があった月数に応じて交付されます。期間の途中で対象地域外へ引っ越した場合、引っ越すまでの月数分が計算され、後日(旧住所または転居届を出した新住所に)通知が届きます。引っ越す際は、必ず郵便局に転送届を出しておきましょう。
- 給付金は課税対象ですか?
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原子力立地給付金は非課税所得です。そのため、受け取った給付金について確定申告をする必要はありません。
- 太陽光発電を設置していてももらえますか?
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ご自宅に太陽光発電システムを設置していても、電力会社との間で電気の契約(買電契約)を継続している限り、給付金の対象となります。完全に電力を自給自足しており、電力会社との契約がない場合は対象外です。
まとめ


今回は、原子力立地給付金と新電力の関係について詳しく解説しました。最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。
- 原子力立地給付金は、新電力に切り替えても問題なく受け取れます。
- 給付金を受け取るための特別な申請手続きは、基本的に不要です。
- 新電力にすると、お知らせの通知元が電力会社から「電源地域振興センター」に変わることがありますが、心配は無用です。
- 受け取りは「郵便振替払出証書」が主流で、発行日から6ヶ月という有効期限には十分注意しましょう。
給付金に関する不安が解消された今、あなたはもう何も心配することなく、ご自身の家庭に最もメリットのある電力会社を自由に選ぶことができます。この記事が、あなたの賢い家計管理の一助となれば幸いです。